理事長所信

2026年度理事長 樋口 一真君が掲げる理事長所信です。

理事長

公益社団法人高松青年会議所
第66代理事長 樋口 一真

スローガン

Illuminate the Future
~歴史に根ざし 未来を照らす~

基本方針

  1. 歴史と思いを紡ぐ機会の創造
  2. Society5.0を生き抜く人財の育成
  3. 共感できる仲間の発見と育成
  4. 思いを届ける情報発信の実施
  5. 規律と敬意ある例会運営

理事長所信

はじめに

私は高松市で生まれ育ち、子どもの頃は徒歩や自転車で商店街に行くことのできる環境で生活していました。休みの日には家族や友人とともに、商店街へ出かけていました。しかし、中学校、高校と時が経つにつれて、商店の数が徐々に減り、空きテナントが目立つようになっていく街の風景を見て、寂しさを感じたのを今でも覚えています。
そのような中、進学を機に県外に出て都会で暮らしていると、高松市が抱える問題に気づくようになりました。どうすれば地元の街がかつてのような賑わいを取り戻せるのか、なぜシャッター街になってしまったのか疑問を抱き、大学の卒業論文では「高松市の中心市街地の再活性化」について研究しました。論文作成にあたり商店街組合を訪ね、資料を提供いただきましたが、のちにその方が高松青年会議所(以下、高松JC)の先輩であったことを入会後に知りました。
社会人となってからも県外で働いていましたが、いつか地元・高松に戻りたいという思いを持ち続けていました。そして、地元に戻った際には社業以外にも地域の活性化に貢献したい、同じ志を持つ仲間と出会いたいと考えるようになり、個人の修練、社会への奉仕、世界との友情の三信条を掲げる青年会議所の存在を知り、入会に至りました。
私は2019年に高松JCに入会し、先輩方からたくさんのことを教わりました。ルールに則った会議運営の方法、事業を行う際の事業計画の作り込み方、地域の問題を見つけるためのヒアリングや調査の方法、発災時のボランティア活動、さらには世代を超えた国際交流や異業種の方々との交流など、これまでに数えきれない機会と学びがありました。
そして今、高松JCは設立70周年という大きな節目を迎えようとしています。この特別な年にあたり、これまでの歩みを振り返るとともに、次の世代へとつなぐ未来の在り方を考える時が来たと強く感じています。

70周年を迎えるにあたり

私たち高松JCは、戦後の1957年に設立されました。これまで先輩方が運動を展開し明るい豊かな社会の実現と、それを牽引するリーダーの育成を行ってこられました。その運動が起点となり、高松の中心市街地が息を吹き返すきっかけになったと知り、私は先輩方が取り組んでこられた地域の未来を見据えた運動に感銘を受けるとともに、今後もJCの三信条を忘れずに、地域とともに成長していくことのできる組織でなければならないと考えています。
私たちが住み暮らす高松市は伝統深く自然に恵まれており、歴史を背景として育まれてきた工芸品や美術品、瀬戸内の多島美や讃岐山脈といった風光明媚な自然に恵まれているだけでなく、近年は多核連携型コンパクトシティ計画の推進もあり、都市機能が中心市街地に集積されつつあります。また、瀬戸内国際芸術祭(以下、瀬戸芸)をはじめとするアート県として国内外からアクセスしやすい地理的、歴史的優位性も備えており、さらに高松環状道路や県立大学設立の検討、中央公園の再整備、高松空港の国際エリアの増改修工事といったインフラ整備の話も進行しています。
一方で、令和5年香川県観光客動態調査報告によると、宿泊観光客は約298万人、日帰り観光客は約599万人(同令和元年調査ではそれぞれ約317万人、約651万人)で、 いずれもコロナ禍前の水準に戻りつつありますが、宿泊を伴う滞在型観光につながっていない現状があります。これは、高松市民や観光客が歴史や文化のソフト面だけでなく、施設や交通機関等のハード面も充実してきていることを知り実感できるような場が不足しているからだと考えます。私たちは高松に住み暮らすなかで、ソフトとハードの両面が日常風景の一部としてしか捉えられておらず、街に誇りを持ちづらい現状があります。また、高松市は少子超高齢社会に起因した人口減少、労働力不足がより深刻になっていくことが懸念されています。そのため生産性向上に資するための生成AIをはじめとしたデジタル化が求められるようになっており、今後さらなる社会構造の変化が起こることが想定されます。
私たち高松JCは、今後も地域の抱える問題を発見し、そして主体的に地域課題に取り組むことで社会の変化に対応しながら地域とともに成長し続ける組織である必要があります。

郷土を知る

高松市の歴史を知ることは、市民一人ひとりが自らの街に誇りを持つための重要な第一歩です。歴史を知ることは単に過去を振り返ることではなく、自分たちがどのような文化や価値観を継承してきたのかを再認識し、未来への指針を得ることにつながります。高松市には、江戸時代に松平家の城下町として栄えた歴史や、讃岐平野の開発、水運を生かした経済の発展等、豊かな郷土の歩みが刻まれています。また、これらの歴史を背景とした他都市との交流は現在も続いています。こうした歴史を学ぶことは、単なる知識の獲得にとどまらず、高松市民としての自己認識を深める契機となります。
令和6年度の市民満足度調査結果報告書では、「高松市に愛着を感じる・やや感じる」と答えた人が約85%に達する一方、「高松市を市外の人に自慢できる・やや自慢できる」と答えた人は約63%にとどまっており、愛着はあるが誇りには結びついていない現状が見て取れます。また、令和5年7月に実施された高松市総合教育会議では、若い世代ほど市政への関心が低い傾向が示されるなど、「地域や社会を良くするために何をすべきか考えることがあるか」という問いに対して肯定的に回答した割合は、小学生で約49%、中学生で約38%と全国平均を下回っており、地域社会への関心の希薄化とともに、地元や社会に関わる活動への参画する意識が低いことが課題になっています。
郷土に対する誇りは、外部からの評価によって生まれるだけでなく、自らがその価値を認識し、肯定することによって内面から醸成されます。特に近年、地域社会とのつながりが希薄化することによって帰属意識が低下しています。郷土について知ることは世代を超えて共通の歴史や文化を共有する手段となり、若者や転入者に対しても、街の歴史を知る機会を設けることは、その地での定住意識や帰属意識の醸成につながります。
高松市民として地域社会への関心が高まることによって、地域への誇りも高まり、まちづくりや観光、防災等の多様な分野において主体的な行動が促されます。これは行政だけでは実現し得ない、地域全体の持続可能な発展の基盤となるものです。今後、高松市がさらなる発展を遂げるためには、歴史を知り、今を見つめ、未来を描く視点が必要不可欠です。その出発点として、私たち自身が高松の歴史を知り、街への誇りを次世代へと受け継いでいく姿勢を持たなければなりません。

新たな未来社会像へ適応していく

政府が提唱する未来社会のビジョンであるSociety5.0は、狩猟社会、農耕社会、工業社会、情報社会に続く第5の社会であり、AIやIoTを活用したデジタルと現実を融合させながら社会課題の解決を実現するというものです。このSociety5.0に移行していくにあたり、教育の方法を見直すことが求められています。
令和6年度の香川県学習状況調査では、小学生の50.5%が「勉強が好き」と答える一方で、中学生になるとその割合が26.9%にまで低下しており、いずれの割合も令和3年度に比べて減少しています。さらに、小中学生の知識や技能に関する問いへの正答率はそれぞれ68.4%、59.0%であるのに対し、思考・判断・表現に関する問いではそれぞれ58.0%、45.1%と約10ポイント低い結果でした。このことから、自ら考え判断し表現する力の育成には、改善の余地があることがうかがえます。
このような学習意欲の低下を改善するためには、単なる座学ではなくプレイフルラーニングのような遊びの中から学びを得られる場が必要であると考えます。地域の未来を担う子どもたちが楽しみながら目標に向かって努力を続け、最後までやり遂げる力の醸成が今求められています。
また、急速な技術の進展により社会の変化がかつてない速さと複雑さを伴って進む現代において、各教科等の学びを基盤としつつ情報を活用しながらそれらを統合し、課題の発見や解決、社会的意義のある成果につなげていく能力の育成が必要です。そのような中で教科等横断的な学習とは、科学・技術・工学・芸術・数学の5つの分野を学ぶことをいいます。教科や科目の枠を超えた学びは、子どもたちの好奇心や創造力を育て、学ぶことの楽しさや意味、社会とのつながりを実感することができるようになります。さらに、こうした経験は達成感や自信となり、やり遂げる力を育むことにもつながります。今後の地域を担う人財の育成には、知識の習得だけでなく、なぜ学ぶのか、学んだ知識をどう活かせるのかといった視点が求められます。その実現に向けて、教科等横断的な学習の認知度を高めることが重要です。
また、時代に合わせた変化は子どもたちだけでなく私たち自身の在り方も見直すきっかけになっています。私たちのような非営利組織においても例外ではなく、業務の効率化や情報共有の迅速化、メンバー間の円滑なコミュニケーションのためにデジタルトランスフォーメーションの推進は不可欠です。さらに、2025年4月には社会変化に対応した公益活動ができるようにと公益法人制度が変わりました。私たちも時代に即した組織運営を行っていくために、定款や規約を改めて見直し持続可能な組織を目指します。

国内外との交流を通じ切磋琢磨していく

私たちの重要な交流事業の一つであり、現役メンバーと卒業されたシニアの先輩方が世代を超えてつながる貴重な機会があります。このような場は単なる懇親の場という枠を超えた大きな意義を持っています。現役メンバーは交流を通じて、これまで脈々と受け継がれてきた志を実感することができ、JC運動の本質や組織としての矜持を再認識する契機となります。さらに、先輩方の豊富な経験や知見に触れることで、現役メンバーにとっては学びと刺激を得られます。当時どのような思いで活動し、どのように困難を乗り越えてきたかを知ることは、現在の課題に取り組むうえでのヒントとなり、青年会議所活動の本質を再確認する機会になります。
また、高松JCは国内外の青年会議所との交流を通じて、相互理解と友好関係を深めてきました。国内では、スポンサー青年会議所である岡山JC、姉妹青年会議所である彦根JC、水戸JC、海外では台湾の鳳凰城JC、韓国の天安JCと毎年交流をしており、これらの交流はメンバーの視野を広げお互いに切磋琢磨する貴重な機会となっています。さらに、今年は岡山JCとの交流会を高松が主管する年でもあり、より一層関係を深めていきたいと考えています。加えて、青年会議所には出向という機会もあります。高松だけでなく香川県内、四国内、日本国内、世界に出向をすることで知識や経験を得られる機会もあります。
青年会議所の良いところは多種多様な人財が所属していることです。人は人によって磨かれるという言葉もあるように、地域をより良くすることのできる組織を目指すためにも志同じく活動する仲間の存在が不可欠です。そのため、今後も継続してメンバーの拡大に力を入れていきます。
本年、JCI ASPAC高松大会(アジア太平洋地域会議、以下、ASPAC)を2006年に開催してから20年を迎えます。ASPACのような国際的な事業を行うことは、地域にとって世界都市・高松の実現に向けた一助となっていると考えます。近年、私たちは国際交流を継続して実施しており毎年アジア各地で行われるASPACではジャパンナイトブースに出展をしていますが、ASPAC高松大会以降は、私たちが主管する国際的な事業を行っていない現状があります。将来的に国際的な大会を主管することは、地域にとっても大きな意義を持ちます。高松は、市内から車で1時間以内の範囲にコンベンション施設やスポーツ施設が揃っており、高松はLCCの国際線就航や瀬戸芸等により外国人観光客が増加していますが、滞在期間が短いという課題があります。体験やスポーツを伴った旅行や大会の誘致を検討することは、高松市の課題である着地型観光から滞在型観光への転換を促進していく起点となると考えます。

共有を大切にする

私たちは毎月1回、全メンバーが集まる例会を行っています。例会ではセレモニーの設営や運営、聴講と各月で役割を変えながら実施し、学びの場としています。また、例会を行うことは私たち青年会議所にとって根幹をなすものだと考えています。なぜならば、組織としての活動の節目を可視化し価値観を共有するとともに、会への帰属意識を育む場でもあるからです。また、形式を重んじて行われるセレモニーを通じて組織的、心理的な連帯感の醸成につながります。そのため、一人でも多くメンバーに参加をしてもらえるように工夫し参加率を高めていく必要があります。
さらに、70周年を迎えるにあたりプロトコル(儀礼的な規範)や服装(ドレスコード)についても今一度見直しを行います。社会的な場において、プロトコルや服装規定は、個人や団体の品位と信頼性を担保する重要な要素です。私たちがプロトコルやドレスコードを遵守することは、公式な場での円滑な関係構築や相互尊重のための基本的なマナーであるといえます。青年会議所の運動は社会課題を解決する公共的な役割を担っており、その言動・立ち振る舞いは常に模範となるという意識が必要不可欠です。信頼は日々の行動の積み重ねで築かれ、それには外見や所作も含まれます。服装は単なる見た目以上に、あなたが「その場をどう捉えているか」という姿勢を表すメッセージと言えます。一見、これらは形式にとらわれているように見えますが、実際は「敬意の可視化」と言え、相手や場に敬意を払い規律を守る姿勢は、周囲からの信頼を得る第一歩となります。結論として、プロトコルや服装規定の遵守は、自己表現の制限ではなく、相手を尊重し、信頼関係を築くために必要なことなのです。
また、私たちは日頃より高松JCの活動や運動を情報発信していますが、その内容や方法を定期的に見直し改善していく必要があります。総務省の「令和6年版情報通信白書」によれば、日本のソーシャルメディア利用者数は2023年の1億580万人から2028年には1億1,360万人に増加すると予測されています。SNSは、もはや若者だけのツールではなく、あらゆる年代におけるコミュニケーション手段になっています。
私たちは、ただ伝えたいことを文字だけで発信するのではなく、情報の受け手の立場になって考える必要があります。情報発信する際は、ターゲットを明確に設定し、掲載する媒体や方法、内容を適宜見直し、高松JCの活動や運動をより多くの方に共感していただくことで、事業への参加者や企業の参画が増える可能性が高まります。

防災と災害支援

私たちは公益を冠する法人であり、明るい豊かな社会の実現を目指すうえで地域社会の安全に寄与する責務を担っています。令和5年度防災白書によると近年、激甚化と頻発化する気象災害等によって広域的な大規模被害が発生した場合において、「公助」の限界が懸念されており、自助や共助の必要性が高まっています。
2024年1月1日に発生した能登半島地震の際に、私は高松JCのメンバーとしてどのような対応をすれば良いのかわからず、何か協力したいという思いが空回りして右往左往した苦い経験があります。そのような中、日本青年会議所の国土強靭化委員会は発災後に、救援物資の支給や現地への支援を他のどの団体よりも素早く取り組んでいました。そのように、災害発生時に迅速かつ有効に動くためには、公益性、即応性、連携力、継続的備えの4つの観点が重要です。また、災害支援活動を行うためにも私たち自身の家族の防災について日頃から備え、計画を立てておくことが必要です。先の震災での教訓に、「備えていたことしか役に立たなかった。備えていただけでは十分ではなかった。」というものがあります。災害に対する準備は最低限必要なことであり、メンバー一人ひとりが常日頃から意識し備えておくことが重要です。

最後に

昨今の先行き不透明な時代において、多くの人が将来に対して不安を抱えています。しかし、私たちは祖父母や両親、そして多くの先輩方のたゆまぬ努力のおかげで、平和な社会のなかで暮らすことができています。だからこそ今、私たちはその安全・安心な社会を守り、持続させながら、次の世代へとしっかりとバトンをつないでいかなければなりません。
「10年先を思うなら木を、100年先を思うなら人を育てよ」という言葉があります。
高松JCは70周年を迎えるこの節目の年に、これまでの歴史を振り返り先輩方の想いを受け継ぎながら、青年会議所の活動や運動を通じてメンバーが成長をすることで明るい豊かな社会の実現に寄与できる人財になっていくことが重要です。そして、新たな次の時代に向かって暗闇を照らす光となれるように一致団結してともに歩んでいきましょう。

※1:Junior Chamberの略、青年会議所
※2:Local Organization Memberの略、各地会員青年会議所