理事長所信

2023年度理事長 吉田 明央君が掲げる理事長所信です。
この所信を元に、高松青年会議所のメンバーは活動を行います。

理事長

公益社団法人高松青年会議所
第64代理事長 九十九 太治

基本理念

感謝報恩
過去への恩返し 未来への恩送り

基本方針

  1. ブランディングによる活動や運動の拡大
  2. おもてなしの心による異文化の相互理解
  3. 未来を共感するインフルエンサーとの連携
  4. 誰もが心地良く夢を育む地域の追求
  5. 価値観と相互の学びの振り返り
  6. 個人の自主性と社会の協調性の向上

スローガン

「The Harmony of Dreams」
全ての夢が調和したところに 誰もが幸福な未来がある

理事長所信

はじめに

高松市は、1945年に空襲を受け、旧市街の80%が焼失しました。高松JCは、戦後の混沌とした時代において1956年に設立し、個人の修練、社会への奉仕、世界との友情の三信条のもと、明るい豊かな社会を実現する活動や運動を、67年もの歳月重ねてまいりました。高松JC は、いつの時代も高松のひとやまちをより良くする可能性を秘めています。
長きにわたり歴史や伝統をつくり上げてこられた約1,000名の先輩諸兄は、それぞれの時代に即した課題解決にご尽力され、現在の高松を形成されました。また、メンバーには自身の利益になることを主たる目的とするのではなく、社会へ奉仕しようとする純粋な動機である利他の精神があります。私たちは、いただいた恩恵に感謝の念を抱き、高い志を受け継いでまいります。そして、高松JCはVUCA 時代を生き抜く持続可能な地域を創造するために一致団結し、青年の視点から社会全体を抽象的に捉え、高松の潜在的問題を発掘し解決のための具体的事業を展開することで、多様な問題へ挑戦し続ける必要があります。私たちは持続的な幸福であるWell-beingを市民と共感し、誰もが心地良く夢を育む高松を創造してまいります。

誰も正解を知らない時代のリーダーシップ

1905年の初め、セントルイスに住む若い銀行員ヘンリー・ギッセンバイヤー・ジュニアにより「社会において青年が真に活躍するようになるべきだ」という展望から、その後に有志の若者が集まり青年会議所が創立されました。そして、100年以上経過した現在では、約130か国、約4,700のLOM 、約15万人のメンバーの活動や運動に広がりました。一人きりでは、世の中を変えることはできません。一人で言えば愚痴、10人で声となり、100人で力となります。
クリード においては「人間の個性はこの世の至宝であり」と多様性を大切にしています。ビジョンにおいては「青年会議所が、若きリーダーの国際的ネットワークを先導する組織となる」と1つに収束されています。私たちは多様性を尊重しながらも、現代に求められるリーダーの姿を考え続ける必要があります。
「最も強い者が、生き残るのではなく、最も賢い者が生き延びるわけでもない。唯一生き残るのは、変化できるものである。」これは生物学者、チャールズ・ダーウィンの言葉とされています。青年会議所は、多様なメンバーが集まり、リーダーとしての成長や発展の機会を提供するからこそ、VUCA時代に適応し続けることができ、相集い力を合わせることで相乗効果が生まれ、社会に与えるインパクトを最大化できるのです。
リーダーシップとは、自己の理念や価値観に基づいて、魅力ある目標を設定し、またその実現体制を構築し、人々の意欲を高め成長や発展をさせながら、課題や障がいを解決する行動です。もし、正解が明確ならば、その方向に突き進んでいくトップダウン型のリーダーシップが有効になります。しかし、現在は先行きが不透明で、将来の予測が困難な時代です。このようなVUCA時代においてはトップダウン型だけではなく、サーバント型のリーダーシップの選択肢も重要です。サーバントリーダーは、共感したビジョンに対して主体性をもち、考え行動する組織メンバーを下から支えるスタイルを採ります。主体的に考えられるメンバーが増えると、内面から湧き上がる意欲に動機付けられ自走できる組織となります。
日本における青年会議所の活動や運動の火がはじめて灯された1949年9月、東京青年商工会議所創立総会採択の設立趣意書には「新日本の再建は我々青年の仕事である。あらためて述べる迄もなく今日の日本の実情は極めて苦難に満ちている。この苦難を打開してゆくため採るべき途は先ず国内経済の充実であり、国際経済との密接なる提携である。」と宣言されています。青年会議所はそもそも、戦後の焼け野原の中で、私たち青年世代が復興のために力を尽くさなければならないという思いから生まれた組織です。つまり、恵まれた環境を前提としていません。誰かが良くしてくれるのを待つのではなく、困難なときに何ができるのかを自ら考え、活動や運動を通じて、より良い社会にしていく組織なのです。このような主体的なリーダーを生み出し続けてまいります。

次代のリーダーの覚醒

100年以上続く青年会議所の例会、日本JC公認プログラム、AWARDなどは、世界共通の成長や発展のコンテンツとして様々な事業の礎となります。
例会は、メンバーが定期的に顔を合わせて、セレモニーでクリード、ミッション、ビジョンという青年会議所の共通の価値観を唱和し、同じ体験をすることにより、組織としての方向性を再確認し、現在の自分を見つめ直すことができるのです。また、例会とともに行われる事業の内容については、参加者が相互の学びを振り返り、インプットするだけでなくアウトプットすることで、より深い理解につながります。同じ事業の内容を学んだ人から多様な受け取り方のフィードバックを得ることも大きなメリットであり、異なる価値観を知るきっかけとなります。
青年会議所には、「青年会議所は、青年が社会により良い変化をもたらすためにリーダーシップの開発と成長の機会を提供する」というミッションがあります。しかし、高松JCは、入会年齢が高齢化し、在籍の短いメンバーが増加しており、青年会議所の魅力を次代のメンバーと共感する機会が少なくなりつつあります。日本JC公認プログラムを学び提供することにより、青年会議所の魅力を共有する必要があります。私たちが、リーダーを育成するリーダーとなり、高松を中心に多くの人財を覚醒させてまいります。
高松JCは、VUCA時代の中で新しい事業をつくり続けることを大切にしています。変化する時代や社会に合わせ、背景や目的を抽出し、事業から得られる結果を検証し、改革や改善を繰り返す必要があります。私たちは、日本JCが運営するアワードライブラリーやGian Pocket という地域にインパクトを与えた事業を研究できるプラットフォームから、課題や手法の新しい視点を取り入れ、事業の構築につなげてまいります。
国勢調査に基づく高松市の人口は、2020年現在、41.7万人です。また、近年の高松市における人口の推移を見ると、2021年を除き、転入者数が転出者数を上回る「社会増」の状況が続いています。一方で、2011年から、死亡数が出生数を上回る「自然減」の状況にあり、総人口は減少傾向にあります。国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、2035年に高松市の総人口は40万人を下回ることが予測されています。人口減少と少子・超高齢社会の進行は、社会経済活動の担い手の減少や社会保障費の増大など、様々な問題をもたらすことが懸念されています。さらに、大都市圏への人口流出が課題であり、特に若年層が、就職や進学に伴い、県外へ流出する状況が顕著であります。また、責任が重いマネジメントを預かりたくないと考える社会人が増加しており、社会にリーダーが不足しています。新しい挑戦をすることに対し、誰しも不安や恐れを抱くものです。私たちは、子どもと地域の企業・産業・社会をつなぎ、学校だけでは学ぶことができない地域を支える仕事の魅力を体験させ、子ども自身が非認知能力を高める機会を創出する必要があります。体験から得られる経験は、子どもが抱く想像力や創造力を具体化し、「どうせ無理」という思い込みの障壁を取り除くことができます。子どもは社会の宝物です。故郷を離れて広く世界を見聞することは大局的な視点を得るためにメリットがあるかもしれませんが、将来故郷に貢献し挑戦し続ける自身の姿を想像できる子どもを育んでまいります。

誰もが心地良く夢を育む地域の追求

全ての人々に安全・安心・安定な生活基盤と質の高い教育機会が確保され、政治・経済・教育・公共など様々な分野で積極的に参加し活躍できる環境を整備することが重要です。社会を構成する全ての人々に公平な権利と機会が与えられ、活躍できる土台があれば、SDGs やESG が目指す誰一人取り残さない社会が実現され、結果、多くの人の英知が結集されることになり、強靭性と持続可能性が向上します。
高齢者や障がい者の社会参加の機会の増加、国際化の進展などによる在住外国人の増加などにより、様々な立場や個性をもつ人がともに暮らす機会が増えています。誰もが生きがいをもち、クオリティ・オブ・ライフの高い人生100年時代を活きるためには、ダイバーシティ&インクルージョンの息づく社会が必要です。
世界には何らかの形の障がいに苦しんでいる約10億の人々がおり、それは世界人口の約15%にあたります。日本においては国民のおよそ7.6%が何らかの障がいを有しています。高松市は2017年12月に全国で初の共生社会ホストタウン6都市に選ばれました。共生社会ホストタウンとは、ユニバーサルデザインのまちづくりや心のバリアフリーに向けた取り組みを行う地方自治体のことです。私たちはハンセン病などの偏見や差別の歴史から得られる教訓を活かし障壁を取り除かなければなりません。
また、2024ジャパンパラ陸上競技大会が9月に高松で開催されることが決まりました。同大会は、日本パラスポーツ協会主催の障がい者陸上の国内最高峰であるとともに、世界パラ陸上競技連盟の公認大会であり、高松市での開催は3年ぶり2度目となります。そのような大会が開催される一方で、障がい者は、歩道、公共施設、ホテル、駐車場などの利用は容易とは言えず、行動圏が必然的に制限されています。私たちは地域社会の環境を含め、あらゆる障がいへの理解が必要です。私たちは、障がい者やサポーターの生活環境や観光に至るまで行動圏を拡大するために、誰一人取り残さないSDGsやESGなどのエシカルな理念の推進により、高松の社会環境や経済の活性化につなげてまいります。また、高松JCの事業や2024ジャパンパラ陸上競技大会の誘致を起点として、障がい者やサポーターなどの高松のファンとともに高松の魅力を拡大し伝えるインフルエンサーとなることで、多様な障壁からこれまでにない地域の価値を創出し心地良さを広く発信してまいります。
高松では、生活に不安を抱える人のニーズを的確に捉え、誰もが安全・安心・安定して快適に暮らすことができるユニバーサルデザイン社会を実現することが求められています。そして、多様な文化を認め合い、相互に理解し合うことができる多文化共生の地域づくりを推進することも必要です。高松JCは多様な視点を知り、相手の意思を尊重するとともに、フォローする工夫を取り入れ、利他の精神を広げてまいります。

GXがもたらす未来の価値

近年、地球温暖化や気候変動の影響により集中豪雨による河川の氾濫などの自然災害が頻発しています。二酸化炭素が増え、海も空も飽和状態となれば、温室効果ガスにより地球はさらに深刻な事態に陥り、エネルギー価格の高騰も重なり、現在のような生活ができなくなります。現代に生きる私たちは、未来を生きる子どもに希望ある選択肢を残す責任世代なのです。
高松市は、2020年12月に「ゼロカーボンシティ」を宣言しました。「ゼロカーボンシティ」とは、脱炭素社会に向けて、2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにすることを目指すことを表明した地方自治体のことです。また、災害に対して四国の支援拠点でもある高松市の次期高松市総合計画基本構想案にある「コンパクト・プラス・ネットワーク」では、将来にわたり、市民が安全・安心・安定して暮らし続けられるよう、市内17か所の集約拠点の医療・福祉・商業などの都市機能を維持し、それぞれの拠点間の補完・連携を高める公共交通を基軸とした集約型都市構造を構築していくことが求められています。
温室効果ガスの排出削減効果を取引できるかたちにしたカーボン・クレジットという取り組みがありますが、例えばレジ袋の有料化に伴い、マイバックを持参する習慣は既に定着しています。さらに、私たちは地方や過疎地の生活に必要な「モータリゼーション」と都市部や過密地での「コンパクト・プラス・ネットワーク」という考え方のもとに、地域の利便性と環境性を両立するには、日常を見つめ直す必要があります。これには、まちというハード面の強靭化だけでなく、ひとというソフト面である市民が災害の予防につながる意識を醸成し行動することが必要です。市民一人ひとりが環境に取り組むことができる事例を学び、脱炭素型ライフスタイルを取り入れる機会を創出してまいります。

世界中の仲間とともに

高松空港は国際空港としてアジアのハブ空港に接続しており、私たちはアジア太平洋地域をはじめとして世界各国とつながることができます。ASPAC や世界会議などのMICE への参加は国際交流の機会となります。
パンデミックの終息により人々が自由に移動できるようになり、急激な円安も後押しし、海外から多くの観光客が日本に訪れています。また、訪日外国人観光客だけでなく在留外国人も増加していますが、高松の地域や経済を盛り上げるためには、グローカルな視点で異文化への理解という国際交流の障壁について考えを深める必要があります。
瀬戸内国際芸術祭を契機に、交流人口が増加しており、近年の働き方改革の一環で、ワーケーションや二地域居住の場として瀬戸内地域が注目されるなど、観光や一時的な滞在の場所として関心が高まりつつあります。さらに、2025年には大阪・関西万博や3年に1度の瀬戸内国際芸術祭などの多くの観光客が訪れる機会があります。今後、私たちは人口の著しい減少を抑制し、活力ある地域を創造するためには交流人口や関係人口を拡大し、様々なカウンターパートと連携して、高松の魅力を国内外に伝える必要があります。
四国遍路の起源は平安時代から始まり現在に至るまで絶えることなく続いています。地域の人々が食事や宿泊で巡礼する方をもてなし応援する「お接待」と呼ばれる風習が今も受け継がれております。私たち一人ひとりが地域に根付く「お接待」の文化を広げ、高松に滞在する方をもてなし、関係を築くことで、ファンを増やしてまいります。
国内では京都会議にはじまりサマーコンファレンス、全国大会、四国地区大会、香川ブロック大会など多くの会議や大会が開催されます。他の地域の会議や大会に参加し学ぶことは、自身にない考えを得られるだけでなく、私たちの組織や地域の在り方を見つめ直す機会になるとともに、他の地域のメンバーとの絆を育むことにつながります。
また、他の地域のメンバーとのつながりは、強靭な人的ネットワークとなります。出向者は自身の成長や発展を促すとともに、高松の魅力を伝える伝道師であり、観光大使です。他の青年会議所を代表する出向者と出逢い、協働することで、相互の地域の魅力を発信する機会があります。それは、出向者だけでなく高松JCの知識や経験という財産になるとともに、他の地域への友情も拡大できます。そして、高松、香川、四国、日本、アジア太平洋地域、世界を一気通貫で考えることができるようになります。他の地域には異なる背景や問題があり、様々な想いで出向されるメンバーがいます。尊敬し、学び合い、相互の地域がより良くなるように考えることができます。また、新しい気づきや発見を得て成長や発展をした出向者は、次の出向者を生み出す原動力となります。
全ての青年会議所メンバーは、それぞれの地域を背負い、それぞれの国を背負い、誇りをもち、活動や運動を展開しています。境界を越えて懇親を深め、相互の課題や考えに学び合い、恒久的世界平和という共通の目的を見つめ直すことで絆を強くすることができます。平和は遠い世界の話ではなく、近くの相互理解こそ希望ある平和を生み出す起点となるのです。

時代に適応し続ける高松JC

社会が多様なライフステージを受け入れる潮流があり、高松JCでも家庭や仕事と両立できる子育て支援などの新たな仕組みづくりが定着しつつあります。家族と過ごせる時間の確保や、情報化社会に適応するDX として会議や事業にオンラインの選択肢を設けるなど、高松JCの活動や運動に取り組みやすいスマートな環境を整えてまいります。
ソーシャルメディアの利用が加速し、マスメディアだけでなく市民一人ひとりがインフルエンサーとなる時代となりました。私たちの周囲には様々な情報が溢れ、必要な能力としてメディア・リテラシーが求められています。このような不安定な情報化社会であるからこそ、自律し、言動に責任をもち、青年会議所に所属していることを誇り、より多くの市民の活動や運動の起点となる必要があります。高松JCは、自らの価値を発信する伝道師となり、多くのカウンターパートに共感を広げます。
さらに重要なのは、共感だけではなく、協働するメンバーを一人でも多く増やすことです。高松JCに所属できるのは20歳から40歳までの品格ある青年であり、その一人ひとりの行動が青年会議所を構成しています。青年としての限られた時間で、卒業という終わりの節目があるからこそ、在りたい未来を真剣に考え抜くことができます。また、単年度制の青年会議所だからこそ不連続の連続を生み出すことができます。20年30年先のことを考えて行動できるのは、その時に生きている青年だけですが、青年会議所は歴代の青年を紡ぎ世代を越えて地域をより良くすることができます。高松JCが想いを紡ぐ新しいリーダーを地域に輩出し続けるためには、青年会議所の価値を傑出した市民や青年経済人に広く深く浸透させ、ともに活動や運動を展開する必要があります。
人間は論理と感情の2つの自分があり、ブランディングには情緒的な「好き」という感情を揺さぶらなければなりません。青年会議所に人が集まるのは、参加する中で楽しい気づきや発見を得ることができるからです。やりたいと思える事業を展開し、新しいメンバーを発掘し、ともに成長や発展をする環境を整えてまいります。高松JCのブランドとは、想いを紡ぐ新しいリーダーを輩出し続け高松をより良くすることを、市民がWell-beingとして実感し続ける価値を提供する在り方なのです。

最後に

地域をどんなに良くしたいと考えても、具体的な行動を起こさなければ変わることはありません。また、行政やスポンサー企業などのカウンターパートのご支援、かけがえのない家族や同僚のご理解があるからこそ、私たちは地域をより良くするための活動や運動ができるのであり、最大の感謝を忘れてはなりません。
新しい挑戦には不安や失敗を恐れる心が芽生えるかもしれません。しかし、勇気と情熱のある前向きな挑戦で得た知識や経験は、明るい豊かな社会を築くための礎となります。できないを恐れず、青年会議所の活動や運動に一緒に挑戦しましょう。私たちの一歩が、私たちの地域になります。

過去からいただいた恩恵を自らの力に変え、誰もが幸福な未来を紡ぐこと。
私たちなら必ずできます。